焦れ甘な恋が始まりました

 


「社長、企画部の狩野(かのう)です。【VENUS(ビーナス)】のオープニング企画の件で、ご相談したいことがあって来ました」


「……ビーナス?」



社長の腕の中で、呆然としながらその声を聞けば、不意に耳に唇が寄せられて。


まるで、溜め息を吐くように甘い声で、ある事実を告げられた。



「新施設の、名前。VENUS―――女神、って名前に、今日の午前中、正式に決まったんだ」


「っ、」



言葉の最後に、チュッ、と。響いたリップ音は、社長がコメカミに軽く口付け、離れていったせい。


不意打ちのソレに身体はあっという間に熱を持ち、キスをされた場所を押さえて社長を見れば、意地悪に笑った社長は足元に転がっていたお弁当箱を拾って私に手渡した。



「―――少し、待ってくれ。今、総務部の方からの提案を受けているところなんだ」



小さすぎず、大きすぎない声は、扉の向こうに立つ狩野さんへ向けたもの。


それを合図に私も慌てて少し乱れた服を直せば、そんな私を見て楽しそうに笑った社長は、「……デザートは、今度ね?」なんて。


やっぱり、意地悪な甘い笑みを零した。