「……日下部さん、」
「え、」
「……少しだけ、抱き締めてもいい?」
「っ!」
……と。
社長?と、言葉を返す間もなく腕を引かれ、身体は意図も簡単に距離を失った。
カラン……と、手から零れ落ちたお弁当箱が、社長室の床に転がったのが視界の端に移る。
強く香るシトラスは、大好きな……下條さんの香り。
「……食後のデザートも、付けてくれる?」
「……し、下條さっ」
耳元で誘うように囁かれ、鼓膜が甘く痺れて身体は必然的に熱を帯びていった。
そして、それを感じ取ったかのように抱き締められていた力が緩められて。
ほんの少しの隙間を空けて私の身体を閉じ込める下條さんの腕の中で顔を上げれば、至近距離でその綺麗な瞳と目が合った。



