焦れ甘な恋が始まりました

 


――――「日下部さんのご好意に甘えているにも関わらず社長が倒れたら、日下部さんが責任を感じてしまいます。休む時は、きちんと休まれてください」



私が社長室を訪れる直前、そう社長室で社長を叱咤する声を扉の前で聞いたのがキッカケで。


いつも通り軽くノックはしたのだけれど、話していた声と重なって聞こえなかったのか。


それか、来る予定だった時間より、10分以上早く社長室に着いてしまったから……うん。


なんだか気まずい気持ちになって一度出直そうとドアノブから手を離せば、逃げる間もなく開いた扉。



「く、日下部さん……」

「す、すみません、一応ノックはしたんですが……」



その時の……いつも冷静沈着・無表情な立石さんが驚いたように私を見た表情(かお)は、多分一生忘れられない。


御用聞きになって初めて、とても貴重なものを目にした瞬間だった。