焦れ甘な恋が始まりました

 


……まぁ実際、御用聞きの仕事は本当に毎日必要で、営業部でも私が資料を届けてくれるから手間が省けて助かると言ってくれてるし。


私としても、他の社員さんに疑われずに社長室に堂々と来れるし、まさに一石二鳥といえるけど。



「それで?冷凍卵黄漬けって?」



フワフワと浮遊していた意識を現実に戻したのは、社長のそんな一言だった。


それに慌てて視線を戻せば、いつの間にかローテーブルの上の資料を綺麗に片付け終えた社長が、不思議そうにこちらを見ていた。


そう、そうだよ。冷凍卵黄漬け。

今は、その話をしてたんだった。



「え、と。生卵を冷凍して白身と黄身を分けたら、黄身だけを醤油とみりんに漬けるんです」


「生卵を冷凍?それは……初耳だな」


「今、結構流行ってるんですよ。でも漬け過ぎてもダメなので、一応、朝一で漬けてタッパーに入れてきたので……。社長さえ大丈夫なら、今日のお昼ごはんのお供にでも……と思って」


「お昼ごはんの?」


「……はい。余計なお世話かとも思ったんですが、今日は、お弁当も作ってきました」


「……お弁当!?」


「ホカホカの白いご飯の上に冷凍卵黄漬けを乗せて食べると、ちょっと違う感じの卵かけご飯になって、とっても美味しいですよ。卵は、疲労回復にも効果があると言いますし、今の社長にはピッタリかなって」



言いながら保冷バックの中から “ 曲げわっぱ ” のお弁当箱を取り出せば、分かりやすく社長の目が輝いた。