焦れ甘な恋が始まりました

 


「お忙しいところ……とても申し上げ難いんですが。営業部の方から、こちらの書類にも今日中に目を通して頂きたいとのことでした。あと……私の方からは、こちらの保冷バックの中身のことだけ、一応説明させてください」


「んー……」



ああ、これは、入ってきたのが私ではなく立石さんだと思っているパターンだ。


仕事の世界に入り込み過ぎて、最早周りの雑音さえ聞こえていないレベル。


最近の社長は決まって、こんな風に自分の世界に閉じ籠って何かを考え込んでいる。


そんな様子の社長を前に、一瞬、話すことを躊躇ったけれど……


無駄な時間を取らせるわけにもいかないし、私は一応いつも通り、資料はローテーブルの上に……手に持った保冷バックは社長デスクの上に置いて、淡々と言葉を紡いだ。