焦れ甘な恋が始まりました

 




「……失礼します、日下部です」



お昼休み直前。
いつも通りに社長室の扉をノックすると、中から蚊の鳴くような返事が返ってくる。


それに苦笑いを零しつつ社長室の扉を開けると、今日も大量の資料と共にソファーに雪崩れている社長の姿が目に飛び込んだ。



「社長……大丈夫ですか?」

「……んー、大丈夫」



机の上に、乱雑に散らばった資料や本。

その内の一つを手に持ち眉間にシワを寄せている社長は、ここ最近寝ていないのか、決して大丈夫とは言えないように見えて仕方ない。


社長室から一歩外に出れば、いつも通りの姿なんだけど……


ここでは、それを隠すことさえ忘れてしまう程には疲れているらしい。