「それでももし、社長が私の作ったものを食べたいと言ってくださるなら、私はそれに精一杯答えたいです。社長に、もっと美味しいものをたくさん食べてほしい」
「日下部さん……」
「だから、社長は安心して仕事に没頭してください。食事のことは、できる限りサポートするように努力します」
と。
そこまで言い終えて、ある言葉が私の頭の片隅に過った。
――――“杏って、彼女っていうより母親みたいな感じで、一緒にいても全然ドキドキしないんだよね”
ああ、そうか。そういう、こと。
―――母親の手料理を食べたことがなく、料理を通して愛情を求めている社長。
だとしたら、社長も……同じなのかもしれない。
比べるのは余りに失礼だけれど、根本的なところは同じで、私が必要とされる本当の理由は。
「―――私の愛情で良ければ、いくらでも召し上がってください」
私に、母のような愛を求めているに違いない。



