焦れ甘な恋が始まりました

 


「そういう意味でも、俺は会社に入社した時に営業部に配属されて良かったと思ってる。社会に揉まれて、自分の甘さを思い知ることができたし、何より……守りたいものも明確になった」


「守りたいもの?」


「……そう。営業部にいる皆を含めて社員たちは、俺を特別扱いしないでくれたし……一社員として、育つように環境を与えてくれた」



言われて思い出すのは、営業部時代の下條社長のこと。


確かにあの頃の下條社長は、何に対しても“ガムシャラ”という言葉が似合ってた。


今でこそ、スマートな仕事ぶりが様になっているけれど……あの頃の下條さんは、お昼休みだとか終業時間だとか、そういうのを一切頭に入れずに仕事に没頭していたのを覚えてる。


だけど、そんな姿を社員たちは、いつも見ていたから。


直向きに努力を重ねて仕事と向きあう下條さんを見ていたからこそ、社長に就任すると聞いた時は、誰もが喜び祝福の言葉を述べたんだ。