だけど、それと同時に。
買い出しに寄ったスーパーや、社長の食生活を聞いて、社長の食に対する意識がアンバランスだと思った理由。
それは……社長の持つ、生い立ちにあるのだと改めて思い知らされる。
「家を出てからは、当たり前だけどプロの作るものには頼れないし。何より、今後の人生を考えたら、自分にはもっと一般常識というか、世の中の当たり前を知る必要があると思って、そういう高級なものには滅多に手を出さないようにしてたんだ」
だからといって、辿り着くのがコンビニ弁当になると、まぁでも……一人暮らしをしている一般男性には、確かにそれが当たり前なのかもしれない。
「こんなことを日下部さんに言うのは変だけど……今まで付き合ってきた女性は、どちらかというと俺とはそういう店に行きたがったり、そういう場所を好むことが多くて。だから、敢えてそこを避ける俺にガッカリして離れていくっていうのがお決まりで、ここ数年は面倒くさくて、そんな関係とも縁がなかった」
困ったように笑う社長は、本来ならそんなことを私に話すつもりもなかったんだと思う。
寧ろ、話したくなかったように見える。
「自分でも、変に諦めていたんだとも思う。もちろん、プロが作る料理に愛情が篭ってないとも思ってないけど、少なくとも……子供の頃の俺は、出された料理に愛情は感じていなかったのは事実で……。
だからこそ俺は、日下部さんの手料理を食べるまで……食事に対して、こんなにも貪欲になることもなかったし、執着することもなかった」
それでも今……社長は、私に思うところの全てを包み隠さず伝えようとしてくれているんだ。
だからこそ、私は。
社長のその誠意に答えるように、ただただ静かに、社長の言葉に耳を傾けた。



