「あ、の……」
「うん?」
「下條さんは、その……」
聞いても、いいんだろうか。
だけどなんとなく、聞くのは不躾な気がして。
つい言いかけて声を止めれば、それだけで私の言いたいことを悟ったらしい下條さんが、再び柔らかな笑みを浮かべて私を見た。
「俺の親父が昔から忙しい人だったのは、なんとなく想像がつく?」
言われて思い浮かべたのは下條社長のお父さん……下條会長のこと。
私が務める今の会社を一代で築いた、とても立派な方だ。
「うちの社員は当たり前だけど、親父のことばかりに目がいってると思う。……でも、実は俺の母親も自分の会社を経営しててさ」
「えっ!?」
「まぁ、そんな大きい会社じゃないよ。通信販売をメインにした化粧品メーカーなんだけど、一部の流行に敏感な人たちには、そこそこ名は知れてる程度の」



