ああ……そういえば、元カレは美味しいとかも余り言ってくれない人だったなぁ。
彼は常に机の上に携帯を置いて、メールやゲームをしながら食事をしてたから、食卓を囲んでいた時に会話もほとんど無かったし。
食べるだけ食べて、「ごちそうさま」も言わず、後片付けまで全部私任せだったことを考えると、どこが好きで付き合っていたのか、5年前の私に聞きたくなる。
「……ごちそうさま。どれも、全部美味しかった。今度は……日下部さんの作った和食も食べてみたいな」
その言葉通り、全ての料理を残すことなく食べ切った社長は、お箸を手元に綺麗に戻してから唐突にそんなことを言った。
それに浮遊していた意識を慌てて社長へと戻せば、真っ直ぐに私を見つめる社長の綺麗な瞳と目が合って。
その瞬間、とても柔らかい笑みを渡されて、胸がトクンと甘く高鳴った。
「ハンバーグもコーンスープもサラダも、他のものも全部美味しかったし、また食べたい。しばらくは毎日出されても飽きずに食べれそうなくらいだけど、他のものも食べたいって欲が出た」
「それは……光栄ですけど、大袈裟です」
「大袈裟なんかじゃない。本当に、美味しかったんだ。前に貰った日下部さんの手料理も全部、本当に美味しかった。今まで、こんなに愛情の篭った手料理を食べたことがなかったから……本当に」



