焦れ甘な恋が始まりました

 


そんな葛藤と戦いながらも一時間ほどで作った料理をテーブルに並べれば、匂いと音につられて再びキッチンにやってきた社長が瞳を輝かせながら私に尋ねた。



「これは、何?」



これは何、って。

見ての通りで、それ以上のものは何もないんですが……



「ハンバーグはデミグラスソースにして、ご希望通り、目玉焼きも付けました。半熟ですけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫も何も、大歓迎」


「それなら良かったです。お疲れでお腹も空いてると思って急いで作ったので、あまり手の込んだものは作れませんでしたけど……」



チラリ、と。

たった今、自分で並べたばかりの食卓を見てみる。

時間の掛かるものは作れなかったけど、一応は栄養バランスとか彩りとか素人なりに考えて作ったつもりだ。



「ハンバーグ以外にコーンポタージュスープとシーザーサラダ、ズッキーニの味噌チーズ焼き、ほうれん草のお浸し……それと、冷やしトマトに微塵切りの玉ねぎのマリネを和えたものは、トマトに疲労回復効果があると言われているので社長には是非食べていただきたくて」


「、」


「苦手な味付けでしたら、すみません。その時は残して頂いて大丈夫ですし、社長はとにかく自分の身体を労ることだけ考えてくださ――――……っ!?」



と。

そこまで言い掛けたところで、突然濃いシトラスの香りが鼻をかすめて、私は弾けるように、ダイニングテーブルに落としていた視線を上げた。