「……ほんとに、いいんですか?」
「え?」
「あの……私の手料理、美味しいかどうかわかりませんし……下條さんのお口に合うかどうかも……」
つい、“社長”ではなく“下條さん”と呼んでしまったのは、驚き過ぎて、無意識に昔の癖が出てしまったせい。
だけど、そんな失態にも気付かずに思ったことをそのまま口にすれば、再び一瞬驚いたような顔をした社長が、すぐに柔らかな笑みを浮かべて私を見つめた。
その表情の変化に胸がキュンと締め付けられて、呆然と彼に見惚れていれば、唐突に、私の手からヒョイッ、と奪われた、巨大な保冷バック。



