焦れ甘な恋が始まりました

 


言いながら自嘲気味に笑えば、社長は驚いた表情で私を見ていた。


それも、そうか。

29にもなって、一つ下の妹のところへ毎週料理を届けに行っているなんて知ったら、過保護な上にシスコンだと思われても仕方ない。


それだけならまだしも、彼氏もいない寂しい奴だと思われたかも。



「でも……日下部さん自身が作り置きした料理なら、家にも同じものが同じくらいの量、あるんじゃないの?」


「えっ……はい。それはそうですが、でも捨ててしまうのは勿体無いので……」


「だからってそれ、全部食べきれるの?」


「、」



思いもよらない社長の言葉に、つい私まで驚き、声を飲み込んでしまった。


そんな私を見て、一瞬何かを考えた様子の下條社長は、更に思いがけない言葉を口にする。