焦れ甘な恋が始まりました

 


傷付いたような、それでいて自嘲するような。

社長のその寂しげな表情の理由が、今も私はわからないままなのだ。


一向に、答えが見つからない。



「いや……あれは、彼に言われた通り、明らかに俺が挑発したせいだから。二人が気にすることは一つもないよ。全部、俺が悪かったんだ」


「……でも、」


「なんていうか、想像していた以上にイイ男で……俺も少し焦って、つい……あんなこと。本当に、情けなかったと思ってる」


「そんなこと……」



そんなこと、ない。


だって、イイ男、なんて。

社長から見たら、陽はまだ子供な分“イイ男”なんて表現される対象ではないはずなのに。


だって、イイ男っていうのは、社長のような……大人の男性に似合う表現だと思うから。


仕事が出来て責任感もあり、誰に対しても分け隔てなく優しくて親切で、思いやりがあって。


きちんとスーツを着こなしているのに、どこか誘うような色気がある。


無骨な長い指も、程よく引き締まった身体も、シャープな顎のラインも、綺麗なブラウンの瞳も、目の下にある泣きボクロさえ……


私からしたら、社長以上にイイ男と表現される人に、今まで出会ったことはない。


社長以上の人なんて、早々現れないと思うのに。