焦れ甘な恋が始まりました

 


「……ごめん、どういう」


「っ、」


「今の言い方だと……俺の方こそ、期待したくなるんだけど」


「……っ、」


「日下部さん……?」


「っ、わ、忘れてくださいっ。失礼します……っ」


「待って……!」


「っ!」



言うだけ言って、逃げようと踵を返してドアノブに手を掛ければ、後ろから扉を押し戻されて部屋から出ることは叶わなかった。


私越しに扉を押し閉めた、下條さんの影が落ちてくる。


下條さんが纏うシトラスの薫りが鼻を掠めた瞬間、今度こそ泣いてしまいたくなった。