焦れ甘な恋が始まりました

 


「あ、の……日下部です。頼まれたファイルを、届けに参りました」

「……入って」



声は聞こえるけれど、以前来た時のようには開かない扉。


恐る恐るドアノブに手を掛け廻せば、カチャリと音を立てて開いたそれは、想像以上に重く感じた。


以前、社長室に訪れた時は立石さんがいた上に、わざわざ扉も開けてくれたけど。


今日は……その姿が、見当たらない。


二時間半前にアポを取った時は立石さんが出たから、てっきり今も立石さんがいるとばかり思っていたのに。