「……はぁ、」
もう、やめよう。このことを考えるのは。
ハッキリ言って、私が社長にどんな感情を抱こうと、それと仕事は関係ないんだから。
今は部長に頼まれたお使いを遂行することが、私の仕事だ。
それにしても……本当に今更だけれど、あんなことがあってクビにされないだけでも、幸いと思った方がいいのかもしれない。
弟が社長に対して、あれだけ失礼なことを言ったのに。
この二週間、なんの音沙汰もないのだから、それだけでも社長の恩恵を受けていると言っていいのかも。
そんなことを考えながら、黙々とデスクに向かっていたところで立石さんに指定された時刻がやってきた。
それと同時に、私は部長に託されたファイルを手に取り、帰り支度と共に重い腰を上げる。
社長のところへファイルを届けたら、私はそのまま帰路につく予定。
今回はただのお使いを頼まれただけだし、鞄を持って社長室へと向かうのは失礼かもしれないけれど、終業時間も過ぎている手前、それくらいは許されるだろう。
心の中で、そんなことを考えながら。
やけに重い足を動かしてエレベーターに乗り、私は社長室のあるフロアへと降り立った。



