焦れ甘な恋が始まりました

 


「……はぁ、」



だけど、悩んでいたって仕事は仕事なのだから割り切るしかない。


部長からファイルを受け取ったあと、社長室へと電話を入れればスリーコール目で出たのは秘書兼運転手の立石さん。


手短に要件を伝えれば、二時間半後に社長室へ来るようにと指示された。


社長の会議が終わるのが、それくらいの時間なのだろうけれど……その時間だと、終業を一時間半ほど過ぎている。


つまり、華の金曜日に“お使い”という中身のない残業を余儀なくされたわけで、それをわかっていたからこそ、部長は酷く申し訳無さそうに私にお使いを頼んでいたのだ。


でも、だからといって頼んできた部長を疎ましく思うわけではない。


だってこれも仕事の内だし、部長だって忙しいのはわかっているから。


そう……わかってる。

わかっては、いる。

わかっては……いるん、だけど。



「…………はぁ、」



溜め息が止まらないのは、お使い先である社長と会うこと自体が、二週間ぶりだからこそ、だ。