「でも、無理してでも彼女のために時間を作りたいなんて。もし本当に彼女がいたとしたら、その彼女さんは幸せ者ですよねぇ」
「っ、」
“――――急に今夜、時間が取れることになったんだ。だから、日下部さんさえ大丈夫なら”
「っていうか、あの社長に誘われて断る女子がいたら、逆に見てみたいですけど!」
小出ちゃんの言葉に、背中に嫌な汗が伝った。
だって、もし本当に小出ちゃんの言うことが事実なら、まるで社長が、私を誘うために無理して仕事を片付けたみたいじゃない……
先週、連絡すると言って三日間連絡がこなかったのも、仕事が忙しすぎて……それでも金曜日に私を誘うために、無理をしてでも仕事を片付けたっていうの?
……ううん、そんなの、あるわけないよ。
だって、相手は下條社長だもん。
あのキス、だって……
もう29の女と32の男が、なんとなく人肌恋しくなって、それでつい出来心でしてしまったものに違いなくて……
心のどこかで社長はそんな人じゃないと思うのは、そうあって欲しいという私のただの願望。
社長だって一人の男なのだから、魔が差してしまう時もあるはずだもの。



