焦れ甘な恋が始まりました

 


「そう。クライアントのことで、少しでもわからないことがあれば、まずは総務部の日下部さんに聞け!って、新人が入ってくる度に営業部長がよく言ってたよ」


「そ、そんなこと……」


「それに、例えば電話一つをとっても、日下部さんは必ず相手を気遣う言葉を添えるし、朝も早く来て誰もしないようなプリンターの掃除やコピー用紙の補充をしたり、植木に水をあげていたり」


「、」


「資料を手渡す時にも必ず一言二言、気になったことを書いたメモを付けたり、頼む前に資料に目を通してくれて間違いや疑問に思うことを指摘してくれたり……もう、あげていったらキリがないくらい」


「で、でも……それは社長が言うように、どれも当たり前のことで……」


「そう。俺が今言った、日下部さんが当たり前だと思っていることは、誰もが簡単に気付けるはずで、簡単に出来ることのはずなのに……誰もが面倒臭がってやりたがらないようなことばかりなんだよ」


「……っ、」


「だからね。そういう傍から見たらプラスアルファなことを、当たり前だと思ってやっている日下部さんは、もう十分、人の役に立っているし、確実にうちの会社には欠かせない人材の一人だってこと」


「っ、」


「そして、そんな日下部さんの仕事に支えられながら、会社は誰かの夢や幸せを実現する為に動けてるんだ。ほら……それって、他の誰にも真似できることではないだろ?」