互いの仕事が終わり、時間差で会社を出た。家の最寄駅で、待ち合わせ。

だけど、思ってもいない得意先の人に会ってしまい、俺はしばらく足止めを食らってしまった。

…朱莉が待っているのに。イライラしながら、でも、それを表に出さないように営業スマイルを崩さないように何とか話を済ませ、朱莉の下へ急いだ。

…最寄駅に下り、朱莉を探していると、すぐに見つかったが、誰かが朱莉に話しかけていた。

・・・何でこんな所で。

明らかに、朱莉は二人の男にナンパされていた。ただでさえ可愛い容姿の朱莉だ。背も小さいし、どちらかと言えば童顔で、歳より若く見える。しかも、今日に限って、短めのスカートを履いていた。

俺はイライラしながら、そこへ足を進める。

「…朱莉」
「…司!」

俺の呼ぶ声に、半泣きだった朱莉の顔が、パッと明るくなり、こちらに走ってきた。そして、俺の後ろに隠れて、男たちをうかがう。

「…俺の連れに何か?」
「・・・別に・・・行こ」

男たちは、明らかに不機嫌な顔のまま、その場を立ち去った。

「…ゴメン、遅れた」

素直に謝罪する。

「・・・・本当に、遅いよバカ」

安心したのか、涙目で俺を睨む朱莉。

…安心させようとその手を掴めば、少し震えていて、握る手に力を込めた。

「ホント、ごめん」
「…もういいよ。来てくれたから」

そっぽを向いたまま、朱莉は呟いた。