「…お前らの事務的センスのなさに俺は落胆したけどな」

そう言って、周りを見渡すと、どこからともなく笑い声が聞こえ始めた。

「…いつもの、東城が戻ってきた」
「・・・え?」

誰かの声に、朱莉は俺の顔を見つめた。

流石の俺も、意味が分からず、両手をあげ首を傾げた。


「斎藤さんが居なくなって、葬式みたいに静かになっちゃったんだよ、東城」
「そうそう。いつも不機嫌な顔して、仏頂面で、斎藤さんが座ってたデスクを何度も見つめたりしてさ」

…自分でも気づいていなかった。…俺、そんな態度取ってた?

朱莉から目を逸らし泳がせる。

すると、朱莉はクスクスと笑いを堪えるように、肩を震わせていた。

「・・・ッ!お前ら!さっさと仕事しろ!」

俺の怒声に、皆が笑いながら、それぞれの持ち場に戻っていく。


「…司」
「…なんだよ?」

「私にべた惚れなんだね?」
「バッ!うるせぇ!」

「はいはい!さて仕事仕事」

笑いながらそう言った朱莉は、溜め込まれた書類の山を、順番に片付け始めた。

…朱莉が帰って来ただけなのに、こんなにも、オフィスの中が華やかになる。

和んで、癒されて、皆が朱莉をこんなにも頼りにしている。

…俺がしたことは間違ってなかったと、確信した。