「営業部長にも確認しましたが、確かに彼女は優秀な人材だ。でもだからこそ、この会社で重要ポストである営業に、彼女はいるべきだった、違いますか、黒川部長」

「・・・」

社長の言葉に、黒川部長は言い返すことが出来ず、黙り込んでいる。

「お言葉を返すようですが、社長」
「黙りなさい、佐々木専務」

穏やかに話していた社長の表情が一変した。こうなったら、もう誰も、社長にタテをつく事は許されない。佐々木専務であっても。

「今回の人事異動は、私利私欲の為、違いますか?」
「「「・・・・」」」

社長の言葉に、三人の顔が歪む。

「私は、会社の為に動く事は咎めはしない。どんどんやってほしいと思います。それで失敗しても、尻拭いはしましょう…ですが、私利私欲の為に動く事は、許さない。…実際営業部は、彼女がいなくなったことで、大分混乱しているようだ。人事にいた社員が営業に行ったらしいが、全く使えないと、社員から部長に、抗議の嵐らしいですよ。その事は、貴方方、知らなかったでしょう?」

「・・・ですが、社長」

黒川部長が発言しようとしたが、社長の怒りに満ちた眼差しに、再び口を閉じた。


「彼女は、営業部に戻します。そして、人事部から来た社員も元に戻す。これからは、勝手な人事異動は慎みなさい」

そこで一旦、社長は話しを区切った。

三人は、一礼して出ていこうとしたが、再び社長に止められた。

「…佐々木専務」
「…なんでしょうか、社長?」