目を真っ赤にして俺を見た朱莉。

…俺は思わず朱莉を抱き寄せていた。

いつも強がっていて、苛めてもへこたれない。ああ言えばこう言う。俺に対して、敵対心むき出しの朱莉が、こんな顔をするなんて。

…やっぱり、朱莉も女なんだと思い、ぎゅっと抱きしめた。

離れようとした朱莉だったが、俺が抱きしめた事によってタガが外れたのが、声を上げて泣き出した。

…いつも、朱莉を苛める事を生きがいにしていたのに。

…この時初めて違う感情が芽生えた。

『朱莉をこの手で守りたい』

…と。

行くあてのない朱莉を、半ば強引に俺の家に住まわせるよう仕向けた俺は、策士かもしれない。

そんな事にも気づかない朱莉は、俺の言いつけ通り、キッチンで料理を始めた。

…真新しいエプロンをつけて、楽しそうに料理をする朱莉を見るのは、これが初めてだった。