「おはよう!いやあーギリギリだった」
夏実はリュックを机の上に置いた。

「お前はいつもギリギリだよ」
柊はすかさずツッコミを入れる。

「いいのー。ギリギリ選手権やるのー」
ニカッと笑う夏実。


なにがそんなに楽しいのか。

たった五人しかいない教室もこのメンバーだと騒がしい。


「夏実、大丈夫?」
愛衣が問う。

「もちろん!全然大丈夫!!」
そう言ってまた笑顔を見せた。


そういえば、もうすぐ夏休みだな。
でも、まあ。
学校が休みでも四人に会うのは変わりないか。

問題は宿題だ。
宿題は嫌いだ。
なぜなら意味がわからないまま解けと言われてるように思えるから。
俺は宿題が嫌い。

小学生のときになんでも宿題にする教師がいたのを憶えている。

『望くん。君は鉛筆の持ち方をしっかり憶えてくることを今日の宿題にします。しっかり憶えて来てくださいね』

今思えば鉛筆の持ち方なんか一日や二日で覚えられる筈がない。

その教師のせいで俺は宿題という言葉自体も嫌いになってしまったのだろう。

その教師は怖かった。


「ねえ!望!」
突然声をかけられ驚いた。
愛衣だ。

「ん?なに?」
顔を向けると愛衣は笑顔でこう言った。

「今度転入生が来るんだって!楽しみだね!!」

「転入生?こんなド田舎に?」

なんでだ。
別にここじゃなくたってよくないか?

家の事情か?

「うん」

「どうしてそれを?」
愛衣に問う。

「先生達が言ってるの聞いちゃった。言わないでおこうかなって思ったんだけど、嬉しくってつい…」

「話してしまったと」

「悪気はなかったんだけど…謝りに行こうかな…」
俯く愛衣に望は言った。

「大丈夫だって。それくらいじゃ先生怒んないよ。気にすんな」
笑いかける。

すると愛衣はパアッと笑顔を咲かせた。

「ありがとう」

でもまだ罪悪感は残るみたいだ。


転入生が来るのっていつなんだろうな。


















それはそう遠くない日であった。