ある夏の日。
「はよ〜」
小出望はあくびをしながら椅子に腰掛けた。
彼の下の名は「ノゾム」ではなく、「ノゾミ」だ。
「おはよう。望」
同じクラスの間宮愛衣が言う。
それに続けて天野柊も身を乗り出して来た。
「お、来たー!はよー!」
愛衣はおしとやかで優しく、先生からの評判もいい。
柊は「シュウ」と読むのだが
よく「ヒイラギ」と間違われるため、
ニックネームは「ヒイラギ」。
本人的には、悪の組織を支配するラスボス感があって気に入ってるらしい。
軽く中二病だ。
読書に熱中しているのは、神崎冬馬。
彼は学年トップの成績を誇る。
テストは毎回100点。オール5で
勉強してるようには見えない男。
本当にいつ勉強しているのかわからない。
塾にも行ってないらしく、全くそこは謎である。
そろそろ予鈴が鳴るな。
望が時計に目を向けたそのとき、桜木夏実が教室にスライディングして来た。
「セーーーーーフッッッッッッ!!!」
アドレナリンが大量に分泌されているように見えた。
彼女は毎日学校に遅刻ギリギリで来るし
テストの点もいつも赤点ギリギリ
提出物の提出もギリギリ
所謂、ギリギリ少女。
いつでもなんでも崖っぷちに立っているのである。
さて、これで全員揃ったな。
え?たった5人だけ?
そうだよ。高校一年生は5人だけ。
超田舎の全校生徒18人の高校なのだから。
こんな学校に転入生が来るとも知らず、俺たちはいつものようにくだらないことを喋っていた。
