私はあのあと急いで家に帰り、お母さんの帰りを待った。
 私と同じ名字…。
 そして、「りほちゃん」という言葉の響きに、昔誰かに、確かにそう呼ばれたような気がしたから。
 私はどうしても、お母さんに聞きたいことがあった。
 …帰ってきたお母さんは言った。

「…えぇ、そうよ。梨穂には…お姉ちゃんがいたの」

そっか、やっぱり。

「そうなんだ…」


「でも、どうして?……まさか…記憶が戻ったの!?」


 お母さんはそう言って私を見つめた。

 まあたしかに、帰ってきたらいきなり私が「小さい頃、私の他にも兄弟いた!?」なんて聞いたら、そう思うよね。

 だって、私は。




 …5歳までの、記憶がないのだから。