「苗字は、…神崎?」

「そうだよ…?なんで知ってるの?」

「…なんとなくそんな気がしたのっ。私と同じ苗字だね!」

 私は、女の子におなじ質問を返した。

「あなたの、名前は…?」

 彼女は、静かに口を開いた。

「わたしはね、かんざき…」

 そこまで言うと、彼女はわざとらしくはっとして信号を見た。

「あ!早くしないと赤になっちゃう!」

 え!?ちょっと待ってよ!
 そして、少女は横断歩道を渡ろうと体の向きを変えた。

「待って!そんなに急がなくてもっ」

 私がそう言うと少女は嬉しそうに、だけども悲しそうに笑った。
 …今思えば、何かに気づいたような怯えた顔をしていた気がする。


「今日は、妹の誕生日なんだ!だから、早く帰らないといけないの!」