ポツポツ降っていた雨が、少しずつ止んできた。

「…おねーちゃんの名前は、何ていうの?」

 私は少し驚いた。いつもの夢と違う展開…?このお母さんの傘を持っていったから?
 この子のお母さんも、この傘と同じ傘を持っているのだろうか。

 でもこれは、所々に細かい刺繍があるし、何より昔にお母さんがどこかに旅行に行って買ったもので、それからずっと何年間も大事に使ってきたはず。
 この辺に住んでいる人が持っているとは思えない。

 不思議に思いながら私は彼女の質問に答えた。

「私は、梨穂っていうよ」

 その瞬間、少女は真面目な顔で「りほ…」と呟き少し黙った。
 そして、顔を上げた彼女は無理やり笑ったように見えた。