「変じゃないですよ」
「そうかな?おかしいよ」
「まあ。そんなの自分が決めることですけど」
そりゃそうだけど。気にならないのかな、周りにどう思われるかとか。
目のやり場に困って、お化け屋敷の後ろにある観覧車を見上げた。好きだったな、観覧車。そんなことも思い出す。
「観覧車乗りたいな」
「観覧車ですか?」
彼も見上げた。太陽の光りが目に当たり眩しそうに目を細める。
「うん。もう、何年も乗ってないないなぁ、とか思って」
言った後、ハッとした。
こんな男と観覧車なんて乗れない。2人きりで密室なんて、何を毒づかれるかわからないし。
まあ、乗るわけないだろうけど。
「俺もそうですね」
誰に邪魔されることなく、ゆっくりとしたスピードで回転を続けている観覧車をただ2人で見つめた。
やっぱり、あそこからの景色はやっぱり見てみたいな。
しばらくして、水城くんが腰をあげた。
「ん?」と言って見上げると彼は「行くんでしょ?」と言った。
「えっ?」
「乗りたいんでしょ?」
「あっ、うん」
先を行く背中に驚いた。
思わず、うん、と言ってしまったけど。
観覧車に乗るなんて、意外な選択。
もしかして乗りたかったのかな、この人も。
いや、どうかな。どうなんだろう。
もしや、わたしに気を遣ってくれたとか?
まさか、ね。
考えてみても、何を思っているのか想像もつかなかった。
だけど、この人は、なんでわたしが言ってほしかった言葉を言ってくれるんだろう。
そう思いながら空になった紙袋をゴミ箱に投げ捨てた。



