みんな、ときどきひとり


仕方なく諦めて「どうぞ」と頷いた。パウンドケーキを包んでいたセロハンをゆっくり剥がす。

「うまい」

水城くんが一口食べて言った。

「ほんと?」

思わず胸を撫で下ろす。まずいとか、こんなの食えないとか、容赦ないダメだしでもされて自信喪失にでもされるのかと思っていたからだ。

「まじ。うまいですよ」

だけど、そう言った彼の顔は、わたしから見るとおいしいといった顔には見えない。どう見ても真顔だ。本当にそう思ってるのかな。

「ほんとに?おいしいときって、もっと笑顔になるんじゃ……気を遣わなくていいよ、別に」

「はぁ……うまいですけどね」

やっぱり、真顔だった。こういう人なのかな。

「ありがとう」

代わりみたいに、わたしが笑ってみせた。