「なんですかそれ?」
「あ。パウンドケーキがいらなくなったので、どうしようかと」
「パウンドケーキ?」
「うん。いっぱい余っちゃってさ」
「ああもしかして、手作りですか?イケメンの」
この前、本屋でこのイケメン本を手にしているところを見られたことを思い出して、少し赤面してしまう。
「うん、イケメンのスウィートレシピらしいよ。甘いの好き?」
苦笑いで答えた。言われたくないこと言いやがって、といみをこめて。
「そんなに」
「そう……ですか」
隣に亮太がいたなら喜んで食べてくれたかな。ありもしないことを想像して切なくなる。
「いらないなら食べますけど」
「えっ?もしや、イケメン好き?」
疑いの眼差しで彼を見つめると、「んなわけないじゃないですか」と、わたしの手にある紙袋をヒョイと取り上げた。
「だあああ!」
慌てて紙袋を取り上げようとしたけど、水城くんはサッと中の巾着型の薄紙素材の袋だけを取り出して、紙袋をわたしの手に渡した。
じろりと睨まれる。なぜか脅されているみたいだった。



