お化け屋敷に向かうみんなを見送ってから、ベンチに座って、流れていく人をしばらく見ていた。
子供に挟まれるように手を繋いでるお母さん。
走り回る子供に、帽子を被せようと、手をやいてるお母さん。
飛び交うのは、笑い声なのに、寂しさが胸をかすめた。
そのとき、トンッとベンチが静かに揺れた。右に顔を向けると、水城くんが座っていた。
「あれ?お化け屋敷は?」
思いがけない登場で目が点になる。
「出口まで30分もある長いお化け屋敷だったんで面倒くさくて戻ってきちゃいました」
「本当に?それは、長すぎだけど……自分勝手だね」
この人には、周りに合わせるって思考がないのかな。さすが、冷たいだけあるけど。
「いや逆にタローあたり嬉しそうでしたけど」
「そういう問題?」
だけど、両手に花状態のタローくんを想像すると笑えた。きっと、鼻の下を伸ばしているに違いない。
ジッと、水城くんが私の持っている紙袋を見てることに気がついた。



