「いない」
いないんだ。わたしと一緒だよ、と、今度は心の中で握手を求めたくなる。
「お前、どういう奴好きなの?」タローくんが訊く。
その光景を見守っていると、「ねえねえ。お化け屋敷行かない?」と少し前を歩く真理恵ちゃんが振り向きざまに指をさして言った。
そこに目を向けると、お化け屋敷という文字の看板がついている洋館が視界に入る。
なぜかここだけ、メルヘンじゃないし。
大袈裟に言えば、洋画のホラー映画とかに出てきてもおかしくなさそうな、小さめだけど、お化け屋敷の割にはしっかりとした建物だった。
「おっ。いいね!行こう!」
ノリのいいタローくんはもちろん賛同する。
「ここのお化け屋敷有名なんだって!超怖いらしいよ」真理恵ちゃんは尚も嬉しそうに話す。
みっちゃんも「行ってみたいね」と顔をほころばせた。
みんなが行く行くムードの中、わたしだけが、無言になった。恐いものが苦手だからだ。
優柔不断だけどこれだけは即断だ。絶対、行かない。
「わたし、いいや。苦手なんだよね、お化け屋敷。そこのベンチ座って待っててもいい?」と、苦手さを猛アピールすると、仕方ないっすね、とタローくんは、笑った。



