みんな、ときどきひとり






南校舎の1階に3年の教室があって、階段を上って2階に2年、3階には1年の教室と高学年が下の階になるように学年わけされている。

とりあえず、階段を上っていちばん近い2年2組から聞き込みをするけど、「ミズキなんていないですよ」と、あっさり言われた。

「ここじゃなかったね」

「3組に訊いてきたけどいないって」

梨花が小走りで近づいてきて言う。

「ていうか、この手紙見せたほう早いんじゃないの?」と美和子がわたしの持っている手紙を見る。

「でも、これラブレターだったら、渡した子かわいそうじゃない?みんなに見せびらかしてるみたいで」

自分に置き換えてみたら顔から火が吹いてしまうだろう。

そんなわたしに目をくれずに積極的な美和子は1組の教室の前で、また声をかけていた。慌てて梨花と追いかける。

「このクラスにミズキって子いるかな?」

即答で「ミズキ?いないですよ」と不思議そうな顔をした。

そこでチャイムが鳴り、なんの収穫も得られず、教室へ引き返した。

「なんだ。残念だね。つまんないなぁ」と梨花だけは不服そう。たぶん、この手紙の差出人にいちばん興味があるのは梨花だ。恋愛絡みの話が、大好きだから。