みんな、ときどきひとり


「この手紙、優菜が拾ったんだって。どうすればいいかわからなくてさ」

しばらく黙って手紙を見ていたかと思うと「わたし、この名前に見覚えあるよ」と言った。

「えっ?本当に?」

意外なところから希望の光りが射した。

「委員会で、この名前見たよ。ミズキとか呼ばれてたっけな?確か2年?」

「2年?」

「3……いや一2……組らへん?ごめん、覚えてないけど前のほうに座ってたからたぶんそこらへんだとは思うよ。顔は覚えてないけど」

「じゃあ、渡しに行けるかも」

人の手紙を持ってるのも気まずいし捨てられないし、良かった。

「あっ」

梨花の声が声をあげた。

「ごめん、シール剥がしちゃった」

梨花の持っている手紙をとると、シールがめくれていてすぐ中の手紙が取り出せそうになっている。

「やばくない?」なんて美和子が言うから、慌てて、剥がれたシールをまた手で押しつけて貼る。

一応くっつきはしたけど、大丈夫かな。

「ていうか見ようとしたでしょ?」

「ギリギリセーフ?綺麗に剥がれたよ?」と、いたずらっこみたいな目をした梨花。

「アウトだよ!」

思わず美和子と声が揃ってしまった。中身は見てないし、知らない顔して渡すしかないと言い聞かせた。