ライトで足元をまた照らしながら、水城くんはわたしに手を差し延べた。

「ん?」と彼の顔を見返す。

「手。先輩、絶対転びますから」

「あっ、ああ」と言って、彼の手にわたしの手を重ねて軽く繋いだ。

柔らかい手に、このドキドキが伝わってしまいそうだ。

さっき自分から抱きしめたくせに。今さらまたドキドキしている。

どうせ、叶わない恋なら。

今だけ。家に帰るだけでもこうしていたい。

きっと、家に帰ったら夢から覚めた気持ちになって哀しくなるんだろうけど。

それでもいい、と、少し手に力をこめた。

この人の気持ちをいつか、誰かが動かす日がくるのかな。

今は、まだ来てほしくないけど。

でも、彼のことを思ったら、そんな日が早く来たほうがいいのかもしれない。

それは、わたしには出来ないことだから。

そのときは、この繋いだ手を離すときより、ずっと、もっと、切ない。