何かあったら、誰か死んでからじゃ遅いこともあるんだろうし。

それは相手でも、自分でも一緒だし。

だから、自分のことそう思えばいいんじゃないのか。

そう思うけど。

そう言ってくれたんです。
そのまま、修くんは帰ってしまいました。

振られたんです。

振られた。

だけど、おかしいんです。

振られたのに、少しだけ嬉しかったの。

だって、修くんが、わたしを見てくれたから」

何度も言葉に詰まらせながら、話しきると、水月ちゃんは目を伏せた。

「そうなんだ」

「せ先輩は、修くんのこと、まだ好きですか?」

好きだって思ってる。だけど、そんなこと、言ったってどうしようもない。忘れなければいけないのだから。

「あれから、話してもいないし。もう、友達以下だから、考えないようにはしてる」

「わたし、修くんはあなたのことが好きだと思ってました。だから、あなたのこと、嫌いでした」

彼女は顔をあげると、わたしの顔を見つめた。

「ストレートに言うね」

「今も、あなたのこと好きじゃないですけど」

「別にいいよ。それでも」

「わたしのこと、恨んでないんですか?」

なんだろう。

わたしに向かって必死に気持ちをぶつけてくるこの子を見てると憎めなくなる。

それに、この子に嫌われるのは、不思議と慣れた。

わたしはたぶん、この子のことを嫌いじゃない。

「恨んでないよ。恨むほど、あなたに思い入れはないし。忘れちゃったよ」

「言いますね」

「お互い様だよ」

汗のかいたアイスコーヒーのグラスを手にする。