「小学生の1、2年が同じクラスだったんです」
「そうなんだ。すごい、偶然だね」
「気づいてると思いますけど。わたし、小さい頃から人と話すの苦手で、うまく話せないんです。
いい今はバイト始めたせいか、ゆっくり落ち着いて話したり緊張しないときは、まだ、まともに話せるんですけど……」
「そうなの?全然わからなかったよ」
そう言われてみると、そうかもしれないけど、全然気にならなかった。
そこで、そんなことないと言うように小さくかぶりを振った。
「だから、小学校のとき男子とかにずっと馬鹿にされたりしてたんですけど……。
修くんは、そんなわたしにも普通に接してくれる、というか。
接する機会もなかったんですけど。
不思議な男の子でした。でも彼が、小2で転校してしまって。
何もなかったんです。
それっきりでした」
それから、また続けた。
「だだから、高校に入学して彼を見つけたときは本当にビックリしました……単純かもしれないんですけど、運命だと思いました」
その時のことを思い出しているのか、顔が少し紅潮して、目がうっとりしている。
でも、わたしでも、運命とか思っちゃうだろう。
「わたしの中で止まってた時計が動きだしたんです……あなたにはわからないと思いますけど。わたし、いらない子ですから。ずっと、無気力でした」
「いらない子って?」
「いてもいなくてもどっちでもいい子。だから、いらない子」
思いがけない言葉が飛び出した。
なのに、彼女は表情ひとつ変えない。
それは当り前のことであるかのように淡々とした口調だった。



