「わたし、今月でバイトやめるんです」
ようやく彼女が重い口を開いた。
「えっ?なんで?」
「けじめをつけようかなって、思って」
「けじめ?」
「修くんのこと」
「それって」
「忘れられないんです」
はっきりそう言うと、切なげに目を伏せた。
そっか。この子も忘れられないんだ。水城くんのこと。
一回、あんな目にあったのに不思議と、今はこの子の気持ちに寄り添った気持ちになる。
同じ人を好きだっただけで、心の痛みが一緒のような気がしているからだろうか。
だから、少しは誰かの気持ちがわかると言って、優しくなれた気になるのだろうか。
「わわわたし……小学校から、修くんのことが好きだったんです」
彼女の突然の言葉に目を丸くしてしまった。
「小学校って?水月ちゃんと、水城くんって地元違くなかったっけ?」
確か水城くんは緑町で、水月ちゃんは……どこだっけ。聞いた覚えがあるけれど思い出せない。
首を傾げているわたしを見て「修くん、小学校2年まで光ケ丘だったんですよ」と微笑した。
「そうなんだ」
そういえば、お姉さんが、Kランドの近くに昔住んでたと言ってたことを思い出した。
そっか、光ヶ丘だったんだ。



