ドンドンとドアを叩く音で目が覚めた。
「やば……寝てた」
ベッドに置いてある時計を見て時間を確認した。
17時48分。
誰だろ、ドアを叩くのは。
「お母さん……?」
寝ぼけながら小声で呟いた。
「姉ちゃん」
大の声だった。まだ頭が眠ってるみたいだ。母が来たと思うなんて。
「なに?」と言うと、勢いよくドアが開いた。
「これ、姉ちゃんの携帯だろ」
大の手にはわたしの白い携帯があった。
「携帯?ああ、ありがとう」
リビングにでも置きっぱなしだったのかな。
わざわざ持ってきてくれるなんて珍しい。
「家の前で、男に渡された」
「は?男?」
どこかで落としたのだろうか。全然気がつかなかった。
「姉ちゃんの後輩って言ってたけど。黒髪の細い奴。家に忘れてたって。姉ちゃん呼ぶか訊いたら、いいって言ったから家あげなかったけど」と言うと、弟は部屋を出て行った。
水城くん?
ドアが閉まると、わたしは急いで窓から顔を出して外を見渡した。
……いるはずないか。
お姉さんの家に忘れてきたんだ。
それで、わざわざ届けにきてくれたんだ。
なら、ここまで来たなら、わたしを呼んでくれたら良かったのに。
本当にもう、関わりたくないんだ。わたしと。



