「産まれてきたのに……産まれてきたのに、こんな質問させるなよ」
言ってて自分で哀しくなってきた。
こんな馬鹿げたこと言いたくない。
「お父さんのこと言われたくなかったら、こんな写真見つからないようにしろよ!
いらないなら最初から捨てろよ!
……わたしなんか」
そう言ったあと、母を見た。
ぼやけて見えて、どんな表情をしているのかわからなかった。
母の前でなんか泣きたくなかったのに、わたしの目は涙をためていて、今にも溢れそうだった。
写真を放り投げた。
何も言わない母を和室に残し、階段を駆け上がって部屋のドアを閉めた。
隣の部屋から物音がしないことに気づいて、弟がいないことにただ安心した。
「浴衣、置いてきちゃった」
呟いてベッドの上に横になる。嫌なことがあると小さい頃からベッドに逃げていた。
あの頃の自分と今の自分は、どこか変わったのかな。
大人になったら、変わると思ってたことも、何も変わってない気がする。
母への気持ちも大への嫉妬も父との距離感も。
何も変わらなくてそのまま、いや、成長するに連れてその気持ちも大きくなってしまった気がする。
だけど、小さなわたしは今も変わらずわたしの中にいて「今日もいい子でいようね」と話し掛けているようにさえ思えてくる。
でも、わたしはまだ高校生なわけだし、まだ子供なのかもしれない。
なら、もう少し大人になったら変われるのかな。
全然、想像もつかないことだけど。
こんな気持ち、もう繰り返したくない。
母のことなど、本当は考えたくもないんだ。



