「もう水城くんと話せなくなるの、嫌だよ。前みたいに普通に話したい」
勢いで気持ちを声にする。
だけど伝わるようにって、彼の目を見つめながら言った。
「だって……好き……水城くんが好き」
言ったあと、恥ずかしくなって目を伏せた。
心臓が痛い。
水城くんは、どんな顔をしてるんだろう。
「頭、打ちましたもんね」
「頭、打つ前から」
廊下を歩く誰かの足音が聞こえる程、静かな空気が2人を包む。
言ってしまった。けど、今、頭を疑ったよね。そんなに驚いたのかな。
顔をあげると、水城くんは、表情も変えずに「俺は、先輩が思ってるような奴じゃないですよ」と言った。
「どういうこと?」
「先輩が思っている程いい奴でもない。そんな人間じゃないです。誰かに思って貰えるような人間じゃないです」
「どうしてそんな悲しいこと言うの?
だって、言ってくれたよ?
水城くんは……わたしの目つき、悪くないって。
そんなことないって言ってくれた。
嬉しかったよ。
そんな優しいこと言える人が思われないわけないでしょ?」
現に、わたしは好きなんだよ。
どうしてまた距離を置こうとするのだろう。
どうして、自分を悪く言うんだろう。
「それは、先輩は俺みたいな目をしていないからですよ。優しくしたわけじゃありません」
「だって水城くんは、優しい目をしてるよ?」
笑うと目尻にしわが寄るんだ。君は、知らないでしょ?自分の笑った顔を、きっと。
「先輩は、俺のこと知りたいって言ってましたよね?」
「うん」
「俺を知って、何になるんですか?」
「えっ……?」



