みんな、ときどきひとり






白い天井。白い布団。白い枕、白いカーテンが視界の中に広がる。

あんなに暗かったお化け屋敷が一瞬で明るくなった。見違えたな、と感心した。

じゃなくて。

意識がはっきりすると、保健室のベッドの上にいるということに気がついた。

頭の後ろを触る。タンコブが出来ているみたいでぽこっと腫れて痛む。

「いててて」

何があったんだろう。確かわたしはお化け屋敷にいて、立ちくらみがしたかと思ったら、何かに足を取られて……。

シャッと閉じられていたカーテンが開けられた音がした。

「……あっ、気がつきました?」

驚いて声のするほうを向く。

これは夢かもしれない。

そう思った。

「水城くん?なんで?」

そこにはお化けの格好をするわけでもなく、いつもの制服姿の水城くんが立っていた。

「なんで?じゃないですよ……こんにゃくで滑って頭打って倒れるなんて、ギャグですよ」と言って、近くにあったパイプ椅子を引き寄せ、腰をかけた。

「ここここんにゃく?」

わたしはタンコブを触りながら、あのぬるっとした感触は、こんにゃくだったのかと思い返す。

立ちくらみもあったせいかもしれないけど、どっちにしろあのタイミングで倒れたなんて、恥ずかしさ極まりない。

しかも、それで気を失うなんて……ギャグだ。

「ごめんなさい。ていうか、もしかして運んでくれたの?」

わたしは、身体を起こして謝った。

「騒ぎになってたら、手嶋って奴が来て運んでくれましたよ。さっきまで居たんですけどステージあるからって行っちゃいましたけど」

「あっ……そうなんだ」

「優しい彼ですね」

「彼、じゃないよ」

だけど水城くんは、その間ずっとここに居てくれたのかな。

「髪型……」と彼はわたしの頭を見ながら言った。

「髪型、すごいですね」

「ああ、これ」

慌てて髪を両手で押さえる。そして不良の格好のままだということに気づいて恥ずかしくなった。

会いに行くのに、この服装はなかった。

美和子たちが、勢いで押し出すから。

失敗した。