みんな、ときどきひとり


階段を上りきると、渡り廊下にある購買の前にしゃがみ込む男子グループを見つけた。

最悪にも、手嶋くんもいる。

わたしから見えるということは彼からもわたしが見えるということだ。

そのとき手嶋くんが、わたしがいる階段側に顔を向けた。

やばい。

ここで見つかったらさっきの勢いで面倒なことになってしまう。

教室の中に隠れようと、駆け込んだ。

だけど、ドアを開けた先は真っ暗闇で、たじろいでしまう。

なこの雰囲気?

顔のまわりがチクチクする。手で触ると葉っぱのような感触がした。

不気味なBGMが流れている。

まるで、お化け屋敷の前を通ると流れていそうな音。

お化け屋敷?

と、ここで、水城くんが2年2組はお化け屋敷をやるって言ったことを思い出した。

てことは、入ってしまったのは2年2組の教室で、お化け屋敷の中にいるってこと。

冷や汗が出てきた。

でも幸いにも、ドアはすぐ目の前にあるから大丈夫。

少ししたら出れば、ばれないはず。

息を潜めて、しゃがみ込んだ。

って、こんなとこに隠れて何やってるんだろう。

そもそも水城くんに会いにきたんじゃないか。

お化けに会いに来たわけじゃないのに。

なんでこんなところに隠れているんだ。わたし。

なのに、もしかして水城くんもお化けの格好とかしてるのかなと想像すると笑ってしまった。

「ねえ。そろそろ出口かなぁ?」と女の子の声がした。

段々と声が近づいてくるから、慌てて立ち上がる。

あれ、なんか……なんかクラクラする。

踏み出した足にムニュッとした感触を感じた瞬間、わたしの身体は後ろへと体重移動した。