『梨花の好きな人はわたしのタイプじゃないから』

『亮太こそ彼女つくったらいいのに』

また嘘をついた。

梨花は小さい顔に華奢な身体。

長いまつげに大きな黒目がちの目。

それに、胸だってある。

きっと、女の子が欲しい要素を全て持っている気がする。

ううん。

わたしが欲しいものを全て持っているだけなんだ。

ただ。

ただ。

ずっと、梨花が羨ましくて仕方無かった。

本当は、亮太の隣に梨花じゃなくてわたしがいたかったから。

本当は、わたしのほうが亮太のこと好きなんじゃないかって思ったこともあったから。

だから、こんな気持ちは誰にも言えない。

亮太にも。

梨花にも。




亮太は梨花のことが好きで。

わたしは亮太の友達で。

梨花とわたしは友達で。

好きになってもらえるわけがないんだ。

友達にも相談できない気持ちなんて捨ててしまえばいい。

亮太を忘れるんだ。




駅のホームには次の電車が到着するアナウンスが流れ出した。

この電車があと10秒後に着いたなら亮太を忘れよう。

そんなくだらないカケを何回したことだろう。

心で数える。

電車のライトがホームにゆっくりと近づいてきた。