みんな、ときどきひとり


「わたしは、友達だと思ってるよ。ずっと。今も」

1年から3年まで、同じクラスだった梨花。

一緒に悩んだり怒ったりした。

そういうことも通り過ぎるといつも笑い話に変わっていて、一緒にいると本当に明るくなる存在だった。

今を築くまで、色んな日々を過ごして、色んな話をしてきた。それだけじゃない。

「そうだね。優菜の本音以外は、色んなこと話してきたもんね」

だけど梨花は振り返らず立ち止まったまま、言った。

わたしの嘘つきは、自分を守る為であって、人を傷つける為じゃなかったはずなのに。

今まで築いてきた友情を信じられなくさせる程の威力を持っていたと思うと、嘘をついていた日々を後悔するしかなかった。

だけど、あのときは言えなかった。わたしの気持ちなんて。

誰にも言う勇気なんてなかった。

今のわたしじゃなきゃ言えなかった。

時間が巻き戻るならいいのに。

巻き戻って、わたしの心が入れ替わればいいのに。

沈黙に耐えきれなくて、黙ってわたしも立ち上がる。

もう、わたしには何も言えることがないのかな。

何か言わなきゃ。

何か言わなきゃ。

何て言ったら、赦してくれるんだろう。

何を言ってほしいんだろう。

「ねえ。優菜、足どうしたの?」

いつの間にか梨花が振りかえっていて、わたしのふくらはぎを見つめていた。

「あ。これ。色々あって。
んーと、階段から突き落とされた。
でも、無事着地成功。
脅威の身体能力。
お尻からだけど。
なんて。はは」と笑ってみたけど、梨花は無言だった。

面白いわけないか。

梨花はなんて言って欲しいんだろう。

どうしたら、赦してくれるんだろう。