みんな、ときどきひとり


そういえば、亮太とわたしが仲良くなったのもケーキがきっかけみたいなものだった。

あれは、確か。

高1の4月でまだ入学して間もなかったと思う。

わたしは昔からケーキやお菓子とか、甘いものが大好きで、おいしいケーキ屋さんはいつもチェックしていた。

あの日の放課後、駅前の通りに東京で大人気のケーキ屋がオープンして、どうしても食べたかったわたしは、学校帰りに1人で立ち寄った。

案の定、店の外には長蛇の列が並んでいて、店員さんに20分程待ち時間があると告げられた。

待つのは正直嫌だったけれど、しぶしぶ行列の最後尾に並んだ。

「田口さん?」

どこかで薄っすら聞いたことのあるような男の子の声が、わたしの名前に疑問符をつけて呼んだ。

振り返ると、わたしの斜め前の席の亮太が立っていたんだ。

「どうしたの?こんなとこで」

「いや、ここの店オープンするって聞いたから買いにきたんだよね。テレビですげぇ話題になってたしさ」

「この前の日曜日やってたやつ?見た見た!」

「そうそうそれそれ。すげーうまそうとか思ってさ。行くしかないよな」

「だよね。でも、意外。甘いの好きなんだ?」

「うん。めちゃめちゃ好き」と言った。

その笑顔がひどく印象に残っている。

その顔にある、粒らで黒目がちな瞳が柴犬を連想させたせいだろうか。

それから、一緒に並んで、どこどこのケーキはおいしいとか学校のこととか、そんな話をして、帰る頃には意気投合していた。

まるで中学校とか、昔からの友達みたいな感じで。

亮太は、わたしに初めてできた、男友達。