みんな、ときどきひとり


少し間を開けて美和子はまた口を開く。

「わたしがさっき、彼氏出来るって言ったのだって本心だしさ。なんか優菜は、きっとさ、好きって気持ちが形になって触れられたり、大きさを見ることが出来たとしてもそれすら信じることが出来ないんじゃないのかな」

その言葉に、「よくやったね、偉いね」と褒める父を嘘つきだと思って見ている自分が浮かんだ。

それと一緒なのかな。

好きって言われたことがないから信じられるかどうかなんて、やっぱりよくわからなくて答えられなかった。

「まあ。とにかくさ、梨花の言う通りさ、言ってくれなきゃわかんないこともあるんだから。もう一回話してみたら?なんか気持ち悪いじゃん、こんなの」

「うん」と、わたしは小さく頷いた。

「うん。これからだ。前進あるのみ」

美和子が、わたしの肩をポンッと優しく叩く。

言いたいことは、わかるよ、美和子。

だけど。それは。そう思うのは、やっぱり難しいよ。

わたしには。

ただ、わたしより小さなその手を大きくて温かいものだと感じることは出来た。